本ウェブページでは,LLマンガへの取り組みについて紹介します。
・LLマンガとは?
・そもそも「マンガ」はわかりやすいのでは?
・LLマンガを必要とする人たち
・だれもがやさしく読めるマンガを求めて大研究!
・オリジナルLLマンガの制作
・オリジナルLLマンガ第一弾
・出版記念オンラインイベント開催!
・トークイベント「豊橋の漫画家,まちなか図書館でLLマンガに出会う!!」 [new]
・LLマンガとは?
・そもそも「マンガ」はわかりやすいのでは?
・LLマンガを必要とする人たち
・だれもがやさしく読めるマンガを求めて大研究!
・オリジナルLLマンガの制作
・オリジナルLLマンガ第一弾
・出版記念オンラインイベント開催!
・トークイベント「豊橋の漫画家,まちなか図書館でLLマンガに出会う!!」 [new]
LLマンガとは?
LLとはスウェーデン語のLättläst(レットレースト)の略語で,「やさしく読みやすい」という意味です。読むことや理解することが苦手な人に向けて,わかりやすくつくられた本をLLブックといい,写真や絵,ピクトグラム(絵文字),読みやすい文章などが使われています。そのマンガ版が「LLマンガ」です。
そもそも「マンガ」はわかりやすいのでは?
一般的に「マンガ」はわかりやすいと思われている表現形態ですが,LLの視点(やさしく読める)からは,「はたして本当にマンガはわかりやすいのか」という疑問が生じてきます。すなわち,- 変則的に並びさまざまな形状に変化するコマ
- ストーリー展開の中でいろいろに変化する登場人物の表情や立ち位置
- 突然時間や場所が移動し,場面がとぶ展開
- 小さな文字がぎっしり詰まった吹き出し
- 人物の口調や文字の配置先によって変化するフォント
- ルビの振られていない漢字
- 絵の一部のように用いられる文字による擬音語や擬態語
LLマンガを必要とする人たち
こうした諸点に注目すると,障害のある人たち(子どもから大人まで)が,自分の生活年齢や興味関心に合った既存のマンガを読むこと自体難しいといえます。ここに,LLマンガの必要性と有用性があるのです。LLマンガの登場によって障害のある人たちも,現在のマンガで表現されるテーマや内容を同じように楽しむことができたら,読書の楽しみが何倍にもなるでしょう。絵が表現の主体となるマンガの世界だからこそ可能なことだと思います。
また,障害のある人たちに限らず,日本語や日本文化に慣れていない外国の方,マンガを読むことに慣れていない高齢の方などの入門編としても,LLマンガは役立つにちがいありません。
だれもがやさしく読めるマンガを求めて大研究!
そこで,2011年,LLブックの研究者,漫画家,マンガ研究者,編集者による「LLマンガ研究会」が発足。LLマンガ制作や分析を試みることになりました。その研究会で繰り広げられた試行錯誤の過程と完成した作品を収録した『障害のある人たちに向けたLLマンガへの招待:はたして「マンガはわかりやすい」のか』(以下,『LLマンガへの招待』)を2018年に刊行しています。障害のある人たちに向けたLLマンガへの招待 はたして「マンガはわかりやすい」のか 吉村 和真・藤澤 和子・都留 泰作 編著 2018年7月30日刊行 ISBN978-4-88367-285-1 B5判 180頁 定価2,420円 (本体2,200円+税10%) |
具体的には,大人が楽しめるマンガを,内容を薄めずに,幼稚にもせずに,わかりやすく読みやすくするためにはどうしたらよいか,さまざまな角度から考察を進めます。
巻末には,制作したLLマンガ作品「赤いハイヒール」「はだか男」を収録しています。
オリジナルLLマンガの制作
『LLマンガへの招待』刊行から数年が経過した2022年初夏,漫画家・津島つしまさんからの一本の電話をきっかけに,本格的なオリジナルLLマンガづくりに取り組むことになりました。そこで,津島さんの熱意に応えたいと,LLマンガ研究会のメンバーが集合。
月一度のオンラインミーティングで議論を重ねてきました。
ついに,2023年11月1日に刊行しました!
ついに,2023年11月1日に刊行しました!
オリジナルLLマンガ第一弾
LLマンガ つたえたい きもち(電子書籍版) 津島 つしま 著 吉村 和真・藤澤 和子(LLマンガ研究会) 監修 2023年11月1日刊行予定 A5判 109頁 定価1,650円 (本体1,500円+税10%) |
下記のサイトよりお求めいただけます。
・Kindle
・Apple Books
・yodobashi.com
・Kinoppy
出版記念オンラインイベント開催!
創作LLマンガ『つたえたい きもち』出版記念オンラインイベント
LLブックってなに? LLマンガってなに?
開催日時:2023年11月9日(水) 13:00-17:00
参加費:無料
開催方法:Zoomミーティング(アーカイブ配信 有)
登壇者:第1部 藤澤和子×川﨑千加(+樹村房)
第2部 吉村和真×藤澤和子×津島つしま
*終了しました。
トークイベント
「豊橋の漫画家,まちなか図書館でLLマンガに出会う!!」
2024年3月20日(水・祝)に,豊橋市まちなか図書館で「豊橋の漫画家,まちなか図書館でLLマンガに出会う!!」と題するトークイベントが開催されました。
聞き役を務められた大林正智さん(元まちなか図書館「ROCK司書」/現益子町地域プロジェクトマネージャー)によるレポートで,当日の様子をお楽しみください。
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「『つたえたい きもち』の著者・津島つしまさんは,まちなか図書館で『LLマンガへの招待』に出会って,LLマンガに関心をもったそうなんです」。
そんな話を樹村房から聞いたのが,ことのはじまりだった。
『LLマンガへの招待』については,出版されたときから新しい試みとして注目していた。「類書ナシ」というフレーズに図書館員は弱いが,まさにそこを突いてくるような本だ。まちなか図書館の開館時にも「これは」と選書したし,ときおり表紙を見えるように展示したこともあった。
その本がきっかけで新たな本が生まれた! だとしたらその話を聞いてみたいし,いっそいろいろな人にも聞いてもらいたい。それがトークイベントを企画したきっかけである。
舞台はもちろん,豊橋市まちなか図書館。登壇者は津島つしまさん,編集を担当した樹村房の安田愛さん,まちなか図書館の種田澪館長,聞き役を大林が務めた。
まず初めに津島さんとマンガの関わり方,デビューの経緯などを伺う。
もともとマンガよりも小説や映画が好きであったが表現の手段としてマンガを選んだことや,初めてのコミックエッセイがTwitterで評判になり,出版社から声がかかって『夫は実は女性でした』の出版に至った話などを聞くことができた。
津島さんのおだやかな話しぶりで,その人となりがオーディエンスに伝わったことと思う。
そこで話はLLマンガとの出会いへ。
ふだん利用している図書館の中でも,あまり行ったことのないコーナーを見ていると『LLマンガへの招待』が目に入ったという。手に取ってLLマンガのおもしろさに気づき,自分も描いてみたいと思った津島さんが,その日のうちに樹村房に電話をして,LLマンガ研究会に連絡を取り,作品を完成させていくまでの流れが,出版社側からの視点を交えて,一気に語られる。
この流れは語り手も当時を振り返りテンションが上がるところで,聞き手からすると,聴衆が引き込まれていくのがよくわかる,見せ場だったと言える。
そしてその流れのなかで,LLマンガとはどういうものか,従来のマンガとの違いや工夫を,そして『つたえたい きもち』がどのようにしてできあがったかを,詳細な資料を提示しながら,二人が語る。
やはり「創作の内幕」といった話は,その創作の外側にいるものにとっては興味をひく話題で,それによってLLマンガへの理解を促すことになったのではと思う。LLマンガならではの創作過程に,新しいジャンルへのチャレンジはこういった困難と喜びがあるのだ,と感じさせられる。
そして種田館長からは,図書館が取り組んでいる「読書バリアフリー」のさまざまなバリエーションと,その意図についての話があり,また大林からはLLマンガやLLブック,点字資料,手話の本,大活字本,などを集めたコーナーの説明などをさせてもらった。
質疑応答の時間には,津島さんの創作生活についての質問や,読書バリアフリー関連資料についての質問があり,幅広く関心をもっていただけたことが伝わってきた。
今回のイベントは,著者にとっては自著を直接読者に紹介する舞台として,出版社にとっては「出版」という事業の社会的な意義を市民と共有する機会として,それぞれが図書館を活用する例となったように思える。
また,図書館側から言えば,利用者が図書館で出会った資料をきっかけに行動を始めるという,望ましい図書館利用の例を可視化できたのが大きかった。さらに,著者と出版社がつくった本を読者が手に取り,その読者が次の著者になっていくという,本の生態系の中に図書館があることを示せたことにも価値があったのではないか。
今後,こういったイベント,プログラムを通して,出版の意義を考え,出版界の活性化につながるような活動が,図書館界に広がっていくことに期待したい。
(写真:まちなか図書館ご提供)
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まちなか図書館の情報紙「bibligare(ビブリガーレ)」vol.9(2024年4月2日号)には,津島さんのインタビューも掲載されています。
bibligare vol.9(2024年4月2日号) 『まちなか図書館のない人生なんて』 |